マレーシアの半国営四輪メーカー・プロトンは去る3月28日、イタリア二輪車メーカー・MVアグスタモーターズの持ち株を1ユーロ(4.4リンギ)で売却した問題について、経緯の詳細を発表した。売却に批判的だった同社特別顧問のマハティール前首相らから公表を求められていたことを受けたもので、プロトンは買収に伴う損失が5億リンギだったことや、5カ月にわたり慎重に検討した結果、運営面、財務面ともメリットがないと判明したことなどを説明した。また、アグスタの事業運営に多額の資金を要することを買収時は知らなかったと弁明している。
プロトンは「さまざな疑念が解消されていないため」と前置きした上で、売却までの経緯を説明した。それによると、同社は買収完了から8カ月後の2005年8月、アグスタの財務状況がプロトン・グループ全体に影響するほど悪化していることに気付いたという。同年2月に会長に就任したアズラン・ハッサン氏は、8月に資金を要求されたとき「驚いた」という。
当初は投資計画の変更を検討したが、アグスタの少数株主の反対にあった。同時に、買収の目的だった技術移転や収入源拡大の実現が難しいことも明らかになった。
その後、投資銀行に依頼した調査でも、アグスタ再建はプロトンの財務状況を大幅に悪化させる可能性があり、事業統合によるメリットは少ないこと、アグスタが破産する可能性が高いこと等の結論を得た。売却額を1ユーロに設定したことについては、高額での売却先を見つけるよう投資銀行に再三求めたが、不可能だったとしている。アグスタは昨年半ばの時点で1億700万ユーロの債務を抱えていた。
また、ハッサン会長は、「買収当時、プロトンはアグスタの事業を維持するために17億6,000万リンギに上る投資が必要だったことを知らなかった」と弁明。以前の経営陣の一部が、取締役会に報告しないまま、子会社を通じて3900万ユーロをアグスタに注入したことも明らかにした。
プロトンは2004年にアグスタ株57.75%を7000万ユーロで取得。昨年末にイタリアのジェビ(GEVI)に1ユーロで売却すると発表し、マハティール前首相やマハリール前最高経営責任者(CEO)から批判された。売却手続きは去る3月2日に完了した。プロトンは「組織改革により意思決定などの方法を改善したため、今後はこのようなリスクは起こらない」と述べている。